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【入門版】インドネシアで事業をする際にかかる税金とは?法人税・VAT・源泉税をわかりやすく解説

コラム

「インドネシアで事業を始めようとしているが、税金の仕組みがよくわからない」——インドネシア進出を検討している経営者の方から、よく聞かれる悩みのひとつです。

インドネシアの税制は日本と大きく異なります。税金の種類・税率・申告の仕組みを正しく理解しないまま事業を始めると、思わぬ税務リスクを抱えることになります。

本記事では、インドネシアで事業を展開する日本企業が最低限知っておくべき税金の種類と仕組みを、できるだけわかりやすく解説します。専門用語はなるべく噛み砕いて説明しますので、「税金のことは初めて」という方もご安心ください。

この記事の目次

  1. まず知っておくべき:税金は「売上」ではなく「利益」にかかる
  2. 法人税(PPh Badan)とは
  3. 付加価値税・VAT(PPN)とは
  4. 源泉徴収税(PPh)の種類
  5. その他の税金(地方税・印紙税・不動産税など)
  6. 日本とインドネシアの二重課税を防ぐ「租税条約」
  7. 税務申告・納税の仕組み
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ:税務は現地専門家と連携して進める

本記事は2025年時点の情報をもとに作成した入門ガイドです。インドネシアの税法は頻繁に改正されます。実際の税務判断は必ず現地の税理士・専門家にご相談ください。

1. まず知っておくべき:税金は「売上」ではなく「利益」にかかる

インドネシアで事業を始める前に、まず最も基本的な点を確認しましょう。

法人税(インドネシアではPPh Badanと呼びます)は、「売上」ではなく「利益(課税所得)」にかかります。

例えば、売上が10億ルピアあっても、経費が8億ルピアあれば、課税対象となる利益(課税所得)は2億ルピアです。この2億ルピアに対して法人税が課されます。

売上高    10億ルピア
- 経費     8億ルピア
= 課税所得   2億ルピア ← ここに法人税(22%)がかかる
  法人税額   4,400万ルピア

「売上全体に22%も税金がかかるの?」と心配される方がいますが、そうではありません。あくまで利益(売上から経費を引いた残り)に対して税金がかかります。これは日本の法人税と基本的な考え方は同じです。

ただし、インドネシアには法人税以外にも複数の税金が存在します。それぞれを正しく理解することが重要です。

2. 法人税(PPh Badan)とは

基本税率:22%

インドネシアの標準的な法人所得税率は22%です。これはインドネシアで事業を行うすべての法人(PT PMAを含む)に適用されます。
日本の法人税の実効税率(約30〜35%)と比べると低く、インドネシアへの投資・進出が税務面でも有利と言われる理由のひとつです。

中小企業向け軽減措置

年間売上高が500億ルピア以下の企業には軽減措置があります。課税所得のうち最大48億ルピア相当額に対しては、標準税率の50%軽減(実効税率11%)が適用され、それを超える部分には通常の22%が課されます。
進出初期の売上規模が小さい段階では、この軽減措置が適用されるケースもあります。

上場企業向け優遇

一定の条件を満たす上場企業(発行済株式の40%以上が一般に公開され、インドネシア証券取引所で取引されている場合)には、19%の軽減税率が適用されます。

法人税の申告・納付スケジュール

法人税の中間納付は毎月求められ、確定申告・納付は課税年度終了後4カ月以内に必要となります。月次で概算を納め、年度末に精算するイメージです。

タイミング内容
毎月月次前払税(PPh 25)を納付
年度末後4ヶ月以内法人税確定申告書を提出・精算
期限超過の場合延滞金・罰則が科される

3. 付加価値税・VAT(PPN)とは

VAT(インドネシア語でPPN:Pajak Pertambahan Nilai)は、商品やサービスの販売に対してかかる税金です。日本の消費税に相当します。

税率

付加価値税(PPn)は2025年1月1日から12%ですが、多くの課税品・サービスについて課税基礎額の計算に特例が出て、実質11%となっています。奢侈品販売税(PPnBM)は10〜200%です。

VATの仕組み(日本の消費税と同じ考え方)

VATは最終的に消費者が負担する税金ですが、事業者が代わりに徴収して政府に納めます。

例)あなたの会社がサービスを販売する場合
 サービス代金  100,000,000ルピア
 VAT(11%)   11,000,000ルピア
 請求総額    111,000,000ルピア
 → 11,000,000ルピアを政府に納付

VAT課税事業者の登録義務

売上高4.8億ルピア以上でVAT課税事業者(PKP)としての登録義務が生じます。
登録後は月次でVATの申告・納付が必要になります。

VAT免税・ゼロ税率の対象

以下のような取引はVATが免税またはゼロ税率となります。

  • 輸出(輸出品へのVATはゼロ税率)
  • 基礎食品(米・穀物・野菜・果物など)
  • 教育・医療・金融サービス
  • 社会保険サービス

4. 源泉徴収税(PPh)の種類

インドネシアの税制で日本との大きな違いのひとつが「源泉徴収税(PPh)」の多さです。給与・サービス料・配当・利子など、さまざまな支払いに源泉徴収が適用されます。

PPh 21:従業員の給与にかかる源泉税

日本の所得税の源泉徴収に相当します。従業員に給与を支払う際、会社が所得税を差し引いて政府に納付します。

個人所得税の源泉徴収(PPh21)は2022年度以降、年間所得5億ルピア超50億ルピアまでの場合税率30%、50億ルピア超の場合35%となっています。税率は所得額によって段階的に変わります。

PPh 23:サービス料・ロイヤルティへの源泉税

インドネシア国内の法人・個人に対してサービス料・コンサルティング費用・ロイヤルティなどを支払う際に適用されます。

サービス対価等にかかる源泉徴収税(PPh23)は2%です。

PPh 25:月次前払法人税

法人税の前払として毎月納付する税金です。前年の法人税額をもとに計算した月次金額を毎月納付し、年度末に精算します。

PPh 26:外国法人・非居住者への支払いにかかる源泉税

インドネシアから日本(本社)への配当・利子・ロイヤルティなどの支払いに適用される源泉税です。日本企業にとって特に重要な税金です。

非居住者のインドネシア源泉所得に対しては、20%の源泉税(第26条所得税)が課されますが、租税条約で軽減税率が適用される場合があります。

日本とインドネシアの間には租税条約があり、配当の場合は10〜15%に軽減されます(詳細は後述)。

源泉税(PPh)まとめ表

種類対象税率
PPh 21従業員への給与0〜35%(所得額による)
PPh 23サービス料・ロイヤルティ(国内)2%
PPh 25月次前払法人税月次納付(年度末精算)
PPh 26外国法人・非居住者への支払い20%(条約適用で軽減)

5. その他の税金

法人税・VAT・源泉税以外にも、以下のような税金があります。

土地・建物税(PBB)

インドネシア国内に土地・建物を所有している場合に課される税金です。毎年課税され、地方政府に納付します。

印紙税(Bea Meterai)

契約書・協定書・領収書などの法的文書に貼付する印紙税です。一定金額以上の取引文書には貼付が義務付けられています。現在の印紙税は1枚10,000ルピア(約100円)です。

輸入税・関税

製品をインドネシアに輸入する場合、品目によって関税・輸入VAT・輸入時前払い所得税がかかります。製品カテゴリによって税率が大きく異なるため、事前の確認が必要です。

奢侈品販売税(PPnBM)

奢侈品販売税(PPnBM)は10〜200%です。高級自動車・高級品・特定のアルコール飲料などが対象です。

地方税

インドネシアの各州・市区が独自に課する税金です。レストラン税・ホテル税・広告税・駐車場税・エンターテインメント税などがあり、業種によっては地方税への対応も必要です。

6. 日本とインドネシアの二重課税を防ぐ「租税条約」

インドネシアで事業を行う日本企業にとって、「インドネシアでも税金を払い、日本でも税金を払う」という二重課税は大きな問題です。これを防ぐために、日本とインドネシアの間には租税条約(二重課税防止条約)が締結されています。

租税条約の主な内容(日本・インドネシア間)

インドネシアの国内法では、非居住者(外国法人・個人)に支払われる配当・利子・ロイヤルティ等に一律20%の源泉徴収税(PPh Pasal 26)が課されます。しかし日尼租税条約により、日本居住者に支払われるこれら所得については軽減税率が適用可能です。

所得の種類国内法(条約なし)租税条約適用後
配当(出資比率25%以上)20%10%
配当(出資比率25%未満)20%15%
利子20%10%
ロイヤルティ20%10%

租税条約を適用するためには、日本の税務署から「居住者証明書」を取得し、インドネシア側に提出する手続きが必要です。手続きを怠ると条約の恩恵を受けられず、20%の源泉税が課されたままになります。

日本側での税務処理

インドネシアで納付した税金は、日本の法人税の計算上、「外国税額控除」として差し引くことができます。これにより、同じ所得に日本でもインドネシアでも二重に税金がかかることを防ぐことができます。

7. 税務申告・納税の仕組み

電子申告(e-Filing)が原則

e-Billing / e-Filing:インドネシアでの電子納税・電子申告システムです。インドネシアでは税務申告はオンラインで行うことが原則となっており、納税者番号(NPWP)を取得した上でシステムに登録する必要があります。

税務調査のリスク

インドネシアでは、VAT還付請求を行うと必ず税務調査が行われるという特有の制度があります。還付ポジションになりやすい輸出型の事業では、特に注意が必要です。

月次・年次の主な税務スケジュール

頻度内容期限
毎月VAT申告・納付(PPN)翌月末日まで
毎月源泉税申告・納付(PPh 21/23/26)翌月10日まで
毎月法人税前払(PPh 25)翌月15日まで
年1回法人税確定申告(PPh Badan)期末後4ヶ月以内

8.  よくある質問(FAQ)

A. いいえ。法人税は「課税所得(売上から経費を差し引いた利益)」にかかります。売上が大きくても経費が多ければ、課税所得は少なくなります。

A. はい。日本の法人税実効税率は約30〜35%程度であり、インドネシアの22%は比較的低い水準です。これがインドネシア進出の税務メリットのひとつです。

A. 配当として日本に送金する場合、インドネシア側で源泉税がかかります。ただし日尼租税条約を適用すれば、出資比率25%以上の場合10%(通常は20%)に軽減されます。日本側では外国税額控除で二重課税を回避できます。

A. 2025年時点では、多くの品目・サービスで実質11%が適用されています(一部の高級品は12%)。日本の消費税10%と近い水準です。

A. 延滞金・罰則が科されます。インドネシアの税務当局(DGT)は税務調査を積極的に行う傾向があり、申告漏れや誤りが発覚した場合のペナルティは厳しいです。必ず期限内に適切な申告を行ってください。

A. 強く推奨します。インドネシアの税法は複雑で頻繁に改正されます。現地の税理士・会計士と連携することで、コンプライアンスリスクを大幅に軽減できます。

9. まとめ:税務は現地専門家と連携して進める

インドネシアで事業を行う際にかかる主な税金を整理すると以下の通りです。

税金の種類対象税率
法人税(PPh Badan)課税所得(利益)22%
付加価値税(PPN/VAT)商品・サービスの販売11%(実質)
給与源泉税(PPh 21)従業員への給与0〜35%
サービス源泉税(PPh 23)国内サービス料等2%
外国法人源泉税(PPh 26)日本への配当・利子等20%(条約で10〜15%)
その他(印紙税・地方税等)文書・取引・業種別種類による

インドネシアの税制は日本と大きく異なり、かつ頻繁に改正されます。本記事はあくまで入門ガイドであり、実際の税務判断は必ず現地の税理士・会計士に相談することを強くおすすめします。

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