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インドネシアから日本へ送金・配当を還流する方法|税率・手続き・注意点を完全解説

コラム

「インドネシアで稼いだ利益を日本に送金したいが、どうすればいいか」——インドネシアに現地法人(PT PMA)を設立した日本企業の多くが直面する課題のひとつです。

インドネシアから日本への送金は、単純な振り込みではありません。送金の目的(配当・ロイヤルティ・サービス料・役員報酬など)によって適用される税率が異なり、必要な手続きも変わります。また、インドネシアには外貨送金に関する規制もあり、正しく対応しないと税務リスクや送金遅延が生じることがあります。

本記事では、インドネシアから日本への主な送金方法・税率・手続き・注意点を、入門レベルからわかりやすく解説します。

この記事の目次

  1. インドネシアから日本への送金:5つの方法
  2. 最も一般的な方法:配当送金
  3. 配当送金の税率と租税条約の活用
  4. DGTフォームの取得と手続き
  5. ロイヤルティ・サービス料による送金
  6. 役員報酬・給与による送金
  7. インドネシアの外貨送金規制
  8. 日本側での税務処理(外国税額控除)
  9. 送金方法の比較と選び方
  10. よくある失敗と注意点
  11. まとめ

本記事は2025〜2026年時点の情報をもとに作成した入門ガイドです。税法・為替規制は頻繁に改正されます。実際の判断は必ず現地の税理士・専門家にご相談ください。

1. インドネシアから日本への送金:5つの方法

インドネシアのPT PMA(現地法人)から日本の親会社・本社に資金を移動する方法は、主に以下の5つです。

送金方法概要インドネシア側税率
① 配当送金利益を配当として日本親会社に送金10〜20%(条約適用で10%)
② ロイヤルティ技術・商標使用料として送金10〜20%(条約適用で10%)
③ サービス料日本本社が提供するサービスへの対価20%(条約適用で軽減の場合あり)
④ 役員報酬日本人役員への報酬として支払い個人所得税(累進課税)
⑤ 貸付金返済日本親会社からの借入金の返済利子に10〜20%の源泉税

それぞれの方法によって税率・手続き・メリット・デメリットが異なります。多くの日本企業が選ぶのは①配当送金です。以下で詳しく解説します。

2. 最も一般的な方法:配当送金

PT PMAが利益を上げた後、その利益を日本の親会社(株主)に「配当」として送金するのが最も一般的な資金還流の方法です。

  1. PT PMAが年間の決算を行い、利益を確定する
  2. 株主総会で配当金額を決議する
    インドネシアでは株主総会での決議が配当支払いの前提となります。
  3. DGTフォームを準備する(租税条約適用のため)
    日本の税務署から「居住者証明書」を取得し、DGTフォームに記入してインドネシア側に提出します。
  4. 源泉税(PPh 26)を控除した上で配当を支払う
    配当金から源泉税を差し引いた金額を日本親会社の口座に送金します。
  5. 翌月にPPh 26を申告・納付する
    配当を支払った翌月に源泉税の申告・納付を行います。

配当送金前に必ず確認すること

  • 定款に配当に関する規定が明記されているか
  • 前年度の法人税が完納されているか
  • 配当準備金(利益積立金)の積み立てが適切か
  • DGTフォームの準備が完了しているか

3. 配当送金の税率と租税条約の活用

インドネシアから日本親会社へ配当を送金する場合、インドネシア側で源泉税(PPh 26)が課されます。

税率の仕組み

ケース税率条件
国内法(条約なし)20%DGTフォームを提出しない場合
租税条約適用
(出資比率25%以上)
10%DGTフォーム提出・日本の居住者証明書取得
租税条約適用
(出資比率25%未満)
15%DGTフォーム提出・日本の居住者証明書取得

ポイント:日本の親会社がPT PMAの株式を25%以上保有している場合、DGTフォームを準備・提出することで源泉税を20%から10%に半減できます。多くのPT PMAは日本法人が100%出資しているため、租税条約の適用(10%)が使えるケースがほとんどです。

配当送金の税負担シミュレーション

例)配当金1億ルピアを日本に送金する場合

ケース源泉税額日本へ送金される額
条約不適用(20%)2,000万ルピア8,000万ルピア
条約適用(10%)1,000万ルピア9,000万ルピア

租税条約を適用するだけで1,000万ルピア(約10万円)の税負担軽減になります。

再投資した場合の優遇措置

2021年2月17日付財務大臣規定にて、受取配当金をインドネシアにおいて特定期間にわたり再投資した場合には税金を免除する措置が設けられました。
日本に送金せずインドネシア国内で再投資する場合は源泉税が免除される場合があります。事業拡大フェーズでは再投資も選択肢のひとつです。

4. DGTフォームの取得と手続き

租税条約(10%軽減税率)を適用するためには、DGTフォーム(居住者証明書)の取得と提出が必須です。手続きを怠ると自動的に20%の源泉税が課されます。

DGTフォームの取得手順

  1. 日本親会社が管轄の税務署に「居住者証明書」を申請する
    日本の税務署に申請し、日本の居住法人であることを証明してもらいます。
  2. DGTフォームに必要事項を記入する
    配当を受け取る日本親会社の情報(名称・住所・税務番号等)を記入します。
  3. 取得した居住者証明書をDGTフォームに添付する
  4. インドネシアのPT PMA(配当を支払う側)に提出する
    配当支払い前までに提出が必要です。
  5. PT PMAがインドネシア税務当局(DGT)に提出する

DGTフォームに配当支払い先(株主)の情報を記入いただき、日本の管轄税務署へご提出ください。また、フォームは配当を支払う会社分それぞれご準備が必要になりますので、あらかじめご注意ください。

注意:DGTフォームは配当支払いごとに必要です。有効期限があるため、毎年・毎回の配当支払い前に確認が必要です。

5. ロイヤルティ・サービス料による送金

配当以外に、日本親会社がインドネシア子会社に対して提供するサービス・技術・ブランド使用に対して「ロイヤルティ」や「サービス料」を請求する方法もあります。

ロイヤルティ送金

日本親会社が保有する特許・商標・ノウハウをPT PMAが使用する対価として支払われます。

  • インドネシア側での源泉税:国内法20%→租税条約適用で10%
  • PT PMAにとっては損金算入できるため、法人税の節税効果がある
  • ただし、移転価格税制の観点から適正な料率設定が必要
  • 根拠となる技術移転契約書の整備が必須

サービス料送金

日本本社がインドネシア子会社に提供するコンサルティング・管理サービス・ITシステム等に対して請求します。

  • インドネシア側での源泉税:PPh 26(20%)が基本
  • サービスの内容・根拠・適正価格の文書化が重要
  • インドネシア税務当局から損金算入を否認されるリスクがある
  • 移転価格文書の整備が必須

重要な注意点:ロイヤルティ・サービス料は「移転価格税制」の対象です。インドネシア税務当局は関連会社間の取引について厳しくチェックしており、適正価格(独立企業間価格)での設定と文書化が求められます。恣意的に高額なロイヤルティ・サービス料を設定すると、損金算入を否認されるリスクがあります。

6. 役員報酬・給与による送金

日本人役員・駐在員がPT PMAから役員報酬・給与を受け取り、日本に送金する方法です。

  • インドネシアで個人所得税(PPh 21)が課される
  • インドネシアで課税される所得は「全世界所得」が原則
  • 日本でも所得税が課されるが、外国税額控除で二重課税を回避できる
  • 役員報酬は法人税上の損金として認められるが、適正額の設定が必要

役員報酬は個人への支払いとなるため、受け取る個人の税務居住地・ビザ・租税条約の適用など、個別の状況に応じた判断が必要です。

7. インドネシアの外貨送金規制

インドネシアには外貨送金に関する規制があります。特に大口の送金には注意が必要です。

主な外貨送金規制のポイント

  • 1回あたり10万米ドル超の送金:基礎となる取引の裏付け書類(契約書・請求書など)の提出が銀行から求められる
  • ルピアから外貨への換算:財務省が公表する為替レートを使用する必要がある
  • 外貨建て取引の規制:インドネシア国内での一部の取引はルピア建てが義務付けられている
  • 送金記録の保管:外貨送金の記録は税務調査に備えて保管が必要

外貨を使用したロイヤルティの送金は、「外貨取引および為替レート制度に関する法律No.24/1999」を遵守する必要があります。この法律の第3条には、すべての国民は、中央銀行から求められた場合、自己が行っている外貨取引に関する情報とデータを提供しなければならないと規定されています。

送金に必要な書類(銀行提出用)

  • 配当決議書(株主総会議事録)
  • 源泉税(PPh 26)の納付証明書
  • DGTフォーム(租税条約適用の場合)
  • 送金依頼書(Transfer Order)
  • 契約書・請求書(ロイヤルティ・サービス料の場合)

8.  日本側での税務処理(外国税額控除)

インドネシアで源泉税を支払った後、日本でも法人税が課される場合があります。これが「二重課税」です。しかし、日本の税法では「外国税額控除」という仕組みで二重課税を回避できます。

外国税額控除とは

インドネシアで支払った源泉税(例:配当の10%)を、日本で課される法人税から差し引くことができる制度です。これにより、同じ所得に日本とインドネシアの両方で税金がかかることを防げます。

受取配当の益金不算入制度

日本の法人税法では、外国子会社(出資比率25%以上・保有期間6ヶ月以上)から受け取る配当の95%を益金不算入(非課税)にできる制度があります。これにより、インドネシアで10%の源泉税を払った後、日本ではほぼ非課税で配当を受け取れるケースがほとんどです。

日本側の税務処理イメージ(出資比率25%以上の場合)

インドネシアで100の配当を受け取った場合
→ インドネシア源泉税10%を控除後、90が日本に送金される
→ 日本では受取配当の95%(95)が益金不算入
→ 日本で課税される配当は5のみ
→ 結果:実質的な税負担は非常に小さい

ただし、外国税額控除・益金不算入制度の適用条件は複雑です。日本側の税理士との連携が不可欠です。

9. 送金方法の比較と選び方

送金方法インドネシア側税率メリット注意点
配当10%(条約適用)手続きが比較的シンプル利益確定後のみ可能
ロイヤルティ10%(条約適用)損金算入でPT PMAの法人税を節税移転価格リスク・契約書整備が必須
サービス料20%(軽減の場合あり)損金算入でPT PMAの法人税を節税損金否認リスク・文書化が必須
役員報酬個人所得税(累進)損金算入可能個人の税務申告が必要
貸付金返済利子に10〜20%元本返済は非課税利子に源泉税がかかる

多くの場合、配当送金が最もシンプルで実績のある方法です。ロイヤルティ・サービス料は法人税節税効果がある一方で、移転価格リスクや税務調査リスクが伴います。どの方法が最適かは、事業規模・利益水準・グループ全体の税務戦略によって異なります。

10. よくある失敗と注意点

DGTフォームを提出しないと自動的に20%の源泉税が課されます。後から還付申請も可能ですが、手続きが煩雑です。配当を決議する前にDGTフォームの準備を始めてください。

インドネシア税務当局は関連会社間の取引を厳しくチェックします。市場相場と大きく乖離した料率は損金否認・追徴課税のリスクがあります。移転価格文書(TP Documentation)の整備が必須です。

大口の外貨送金には裏付け書類が必要です。配当決議書・源泉税納付証明書・DGTフォームを事前に揃えておかないと、銀行の審査で送金が遅延します。

インドネシアで払った源泉税は、日本の法人税申告で外国税額控除として申請できます。申請を忘れると二重課税になります。日本の税理士と連携して確実に処理してください。

インドネシアでは当期利益がない状態での配当は原則認められません。繰越利益剰余金がある場合は配当可能ですが、税務上の処理が複雑になります。現地の会計士に確認してから進めてください。

11. まとめ

インドネシアから日本への送金・資金還流のポイントを整理します。

  • 最も一般的な方法は配当送金——株主総会決議→DGTフォーム準備→源泉税控除→送金の順で進める
  • 日尼租税条約を活用すれば配当の源泉税を20%→10%に軽減できる(出資比率25%以上の場合)
  • DGTフォームは配当送金前に必ず準備——怠ると自動的に20%課税
  • ロイヤルティ・サービス料は法人税節税効果があるが移転価格リスクに注意
  • インドネシアの外貨送金には裏付け書類が必要——事前準備が重要
  • 日本側では外国税額控除・受取配当益金不算入を活用して二重課税を回避
  • 送金方法の選択は日本・インドネシア両側の税理士と連携して決定する

インドネシアから日本への資金還流は、税務・為替規制・手続きの3つの観点から正しく設計することが重要です。ANCジャパンでは、インドネシアの現地ネットワークを活用した税務・会計専門家のご紹介も含め、資金還流に関するご相談も承っています。「どの方法で送金すべきか」「DGTフォームの手続きが不安」という方は、まずはお気軽にご相談ください。

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